最近はバッテリーの大容量化・小型化に伴って、AC100V出力対応のモバイルバッテリーが比較的安価に手に入るようになってきた。わが家も多分に漏れず、Anker製のPowerHouse 200を所有しており、キャンプや防災のために活躍している。ところがある日、ACがまったく出力されなくなった。ON/OFFボタンを押すとAC出力を示す「AC110V」は点灯するのだが、ACに接続した機器が動かない。確認のためデジタルマルチメーターで端子の電圧を測定してみたところ、出力が0Vとなっていた。完全に故障してしまったようだ。一方でDC12Vのシガー出力やUSB出力は問題なく使用できることから、おそらくAC出力を制御する回路のみ故障したものと推測した。
そこで、この記事では「Anker PowerHouse 200」のAC出力を修理したので、それを記録として残す。修理の結果、AC出力は問題なく出力されるようになり、問題なく使用できるようになった。
準備
筐体の全面と背面を上に示す。デザイン性の高い筐体のため、非常に分解しづらい。分解には殻割りのための分解ツールがあると便利であるため、必要な物品として掲載する。また、今回の故障はインバーター基板に搭載された一次側のチップヒューズが切れていたことが原因だったため、切れたヒューズと同等の物を準備する必要がある。
チップサイズはインチ表記で「1206」サイズ、mm表記で「3216」サイズである。インターネットで購入先を色々と調べてみたが、マルツの通販が最も入手性が高かったので掲載する。
品物 | 数量 | 参考価格 | 備考 |
分解ツール | 1 | 361円 | https://amzn.to/3Pp6Fmb |
表面実装 30Aヒューズ 1206 | 1 | 99円 | https://www.marutsu.co.jp/pc/i/1746990/ |
分解
その1 底面のネジを外す
フロントパネルとリアパネルは底面のネジで固定されている。底面のネジはゴム脚の中に隠れているため、まずゴム脚を剥がす必要がある。ゴム脚は両面テープで接着されているので、隙間に分解ツールを差し込み、めくれた部分を手でゆっくりと引っ張ればゴム脚を取り外すことができる。
ゴム脚を取り外すとパネルを固定するネジが現れる。フロントとリアの両方のネジ(合計6本)を取り外す。
その2 側面のネジを外す
側面に左右4本ずつ、合計8本あるネジを取り外す。ネジとネジの間に一見分割できそうな溝が入っているが、これは意匠のためであり分離できない。(最初、私はこれに騙されました)
その3 フロント、リアのパネルを取り外す
底面、側面のネジを取り外せばパネルは開放される。ただし爪で引っかかっているため、かなり強引に引っ張る必要がある。爪は上下左右それぞれ2個ずつ付いており、分解ツールなどで要領よく押さえながら取り外すと爪が割れずうまく取り外せる。爪の形状や取り付け位置は以下の写真を参考にして頂きたい。基本的にフロントとリアどちらも同じである。
フロントパネルを取り外すと各種出力端子が現れるので、裸の端子がショートしないように丁寧に取り外す。また念のため感電に注意し、端子には直接手を触れないようにする。
その4 リアのインナーカバーを取り外す
リアのパネルを取り外すと内側にもう一つインナーパネルが現れる。中央の黒いネジ(5本)と周囲の銀色のネジ(9本)で取り付けられているが、ネジを取り外すだけではパネルが外れない。以下の写真を見て頂ければわかるかと思うが、内面が白い接着剤のようなもので固定されているため、ネジを取り外した後にやや強く引っ張ると取り外しができる。
写真にはないが、フロントパネルについても周囲にある9本のネジを取り外す。これでアルミニウムの筐体部と前後パネルが分離されてようやく基板が現れる。
その5 インバーター基盤にアクセスする
基板部を上からみた写真を下に示す。こちらがモバイルバッテリーの制御を司るメインボードと思われる。フロントパネルにある液晶画面やボタン類、USB、シガー出力などに繋がるケーブルが接続されている。ヒューズにあたる「F」記号のチップの導通を全てチェックしたが、特段問題なかったのでこちらは故障していないと推定した。
以下の写真がAC出力を制御するインバーター基盤である。側面右側に縦向きに搭載されている。右上の端子にDC12Vが入力され、左側の端子からAC110Vが出力される。制御関係と思われるフラットケーブルがメインボードから接続されている。
インバーター基板を取り外した写真が下の写真である。取り外しの際はくれぐれもフロントパネルでAC出力がOFFになっていることを確認し、基板や端子部に直接手を触れないように丁寧に取り外す。まず最初に一次側のDC12Vのケーブルを取り外し、その後他のケーブルを取り外した。
インバーター基板のバージョンが記載されている。インターネットにも情報がないため詳細不明だが、製造時期によってバージョンなどが異なるかもしれないので念のため掲載する。
その6 ヒューズにアクセスする
インバーター基板にはヒューズがいくつか取り付けられていたが、導通チェックした中で唯一不良だったヒューズがこのヒューズである。基板右上に取り付けられている「F1」記号のチップヒューズである。基板の記号「F」はヒューズ(Fuse)の頭文字である。バッテリーが接続されるコネクタ(CN2)の+側の脇にあるため、インバーター回路の一次側ヒューズと推定される。ここが切れたのは回路保護の観点で正しい動作と言える。
このヒューズは隣接する電解コンデンサ(CE1)と白い接着剤に隠れているため、電解コンデンサと接着剤を除去しないと視認できない。写真のとおりチップ中央上部に焦げがあり、過電流によりヒューズが動作したことが伺える。
導通チェッカーでこのヒューズの導通が確認できなかったこと、ヒューズを除去し両端子をショートさせた状態で動作させると問題なくAC出力されることの2点から、このヒューズが切れたことがAC出力しなくなった原因と特定した。ヒューズには「30」の記載があるので当該部品は30Aのヒューズと推定し、同等品と取り替えることとした。
その他、インバーターでしばしばみられる電解コンデンサの容量抜け(所謂「妊娠」)も確認したが、特に容量に問題はなかったのでヒューズのみ交換することとした。(DIPタイプのみチェックし、表面実装のコンデンサは未チェック)
その7 ヒューズの交換
問題のヒューズを半田ごてや半田吸引線で丁寧に除去したのち、購入したヒューズを取り付ける。
30AのヒューズはこのモバイルバッテリーのAC出力定格(110V-100W)を考えてもやや過剰ではないかと考えたので、念のためAC出力に接続する機器の消費電力とこのヒューズに流れる電流の関係を調べ、30Aに対してどの程度の余裕があるかを確認した。その結果が以下のグラフである。
横軸はAC出力に接続した機器の定格消費電力、縦軸はヒューズF1に流れる電流(実測)である。100W以下で消費電力の異なる電気製品があまり手元になかったためプロット点が少ないが、100Wの機器を接続すると、約11Aの電流がヒューズF1に流れることになる。このことから、定格の3倍程度の電流が流れるとヒューズF1が切れる設計になっているようだ。AC出力定格からはかなり余裕があるように見えるが、これくらいの安全代は普通なのだろうか。。
修理完了
ヒューズを換装したら元通り組み立て修理完了である。AC出力されるか確認したところ、問題なく出力されることを確認した。動画は別連載記事で制作中のニキシー管時計である。そちらはまた今度記事にすることにする。
総括と反省
本記事では「Anker PowerHouse 200」のAC出力が故障したので修理を行った。原因はインバーター回路のヒューズが切れであった。ヒューズを新しいものに換装した結果、AC出力は問題なく出力されるようになり問題なく使用できるようになった。
2019年の発売から約4年半が経過したが、まだまだ現役である。バッテリーも大容量でUSB-Cも搭載されているので、これからもキャンプやアウトドアでますます活用したい。
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最近は天体観測が面白い。普段見えないものが見えるようになることにワクワクする。その気持ちを大切にしたい。
初めまして。
我が家で使っていたANKER PowerHouse Ⅱ 400が使えなくなりました。出来れば、修理出来ないかと思っていますが、みて頂けますか?
初めまして、ゆーと申します。ご返信が遅くなってしまい申し訳ありません。状態を確認させて頂きますので記入して頂いたメールアドレスに連絡させて頂きます。場合によっては直らないことも考えられますので、その点はあらかじめご了承ください。